2012 年 14 巻 2 号 p. 125-134
高齢者の3人に1人は1年間に1回以上経験するとされる転倒は,主要な要介護要因の1つとしても挙げられている。近年,いくつかの転倒予防介入に関するシステマティックレビューによって,転倒予防介入の有用性について報告されている。しかしながら,これらの報告は65歳以上の高齢者をひとまとめに“高齢者”として扱っていることから,すべての高齢者に汎用化されるとは言い難く,有用になる機能レベルの高齢者もいれば,そうでない機能レベルの高齢者も含まれてしまう。機能レベル別の転倒リスク要因を検証すると,比較的機能レベルが高い高齢者では二重課題能力の低下が,逆に比較的機能レベルが低い高齢者では下肢筋力の低下が転倒と関係していた。更に,このような機能レベル別の要因に応じた介入を行うことで,必要となる機能を適切に向上させ,転倒予防に有用となることも示唆されている。しかし,現状では十分に科学的検証がなされているとは言い難く,テーラーメード型の転倒予防の確立に向けて,今後更なる検証が求められている。