日本交通科学学会誌
Online ISSN : 2433-4545
Print ISSN : 2188-3874
つわりと自動車運転
─妊婦運転者に対する実態調査─
花原 恭子立岡 弓子一杉 正仁
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 21 巻 1 号 p. 26-32

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抄録

妊婦の自動車運転によって生じた自動車事故またはヒヤリハットは、母体および胎児の生命の危険に遭遇する可能性が高い。そのため、妊婦の自動車事故の要因を分析し、安全性を確保することは急務である。そこで、妊婦運転者の自動車事故またはヒヤリハットの発生率や原因の実態を明らかにし、自動車乗車中の妊婦に対する安全教育の具体的な課題を明確にするために、妊婦を対象としたアンケート調査を行った。対象は、産婦人科外来の妊婦健康診査または母親教室を受診し、日常的に自動車を運転する妊婦696人である。妊婦の自動車運転による事故経験率は2.9%、ヒヤリハット経験率は7.8%であった。そのうち、自らが原因で起こした自動車事故またはヒヤリハットの経験率は44人(4.6%)であった。さらに、原因については、「ぼーっとしていた」がもっとも多く(妊娠前期67.9%、妊娠後期87.5%)、「つわりによる気分不快」が続いた(妊娠前期46.4%、妊娠後期12.5%)。妊娠前期と妊娠後期で原因を比較すると「つわりによる気分不快」は、妊娠前期に有意に多く認められた(p<0.05)。自動車運転は利便性が高いことから妊婦が利用する機会も多いが、とくに妊娠前期にはつわりや眠気による集中力低下を起こしやすいため、セルフケアできるような保健指導が必要であり、妊婦がセルフチェックを行ったうえで安全に自動車運転を実施するよう、注意喚起する必要がある。

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