日本交通科学学会誌
Online ISSN : 2433-4545
Print ISSN : 2188-3874
新生児医療現場からみた新生児期の車の移動に関する現状と問題点
川戸 仁
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 21 巻 1 号 p. 33-39

詳細
抄録
日本国内の新生児医療現場において、新生児期の車での安全な移動に関する議論がなされる機会が海外に比較して少ない。新生児医療現場からみた新生児期の車の移動に関する成田赤十字病院(以下、当院)の現状と問題点を調査した。対象は2015年1月〜2019年12月の5年間、近隣産院出生で状態不安定のため搬送救急車で当院に収容した新生児372例のうち、状態が安定したため出生元の産院に後方搬送を行った新生児73例。新生児集中治療室(NICU)退院時の交通手段として、いずれの年も搬送救急車よりも自家用車使用の割合が高い傾向であった(2015~2017年:100%、2018~2019年:50%)。また、同期間で出生体重が2,000g未満の低出生体重児297例のNICU退院時の体格(身長、体重)について1,000g未満(A群)、1,000~1,499g(B群)、1,500~1,999g(C群)の3群に分けて比較したところ、軽症で状態安定に時間を要さなかったC群が3群の中でより小さな体格で退院していた。生後間もない新生児の移動を考慮した際に、とくに満期産児よりも一回り小さな状態で退院する低出生体重児において、CRS(child restraint system)装着の際にはハーネスとの隙間や着座姿勢に対する工夫などが求められることが多く、既存のものを使用するだけでは安全性を含めた退院指導に限界があり、今後現場の需要に即したCRS装置などの開発が待たれる。
著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本交通科学学会
前の記事 次の記事
feedback
Top