日本交通科学学会誌
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Print ISSN : 2188-3874
交通事故統計データを用いた健康起因事故の分析と運転支援
國行 浩史
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 21 巻 1 号 p. 47-55

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抄録

高齢化社会が進み、ドライバーの高齢化も進んでいる。高齢者をはじめとして何らかの疾病をもちながらも、生活維持、社会復帰のために自動車の運転が必要である。しかし一方で、体調急変が起因する事故は後を絶たない状況にある。事業者による運行前確認などで管理され疾患に対するガイドライン等で許可される疾病状況ならば、支援によって安心して安全に運転できる体制が求められる。そこで本研究では、日本の交通事故統計データを用いて、てんかんや心疾患などに起因する交通事故の現状とその特徴を分析した。さらに、これらの結果から、安心して安全に運転を遂行するために求められる支援技術の方向性を示した。健康起因による死亡事故は10年間で182件、重傷・軽傷事故は2,374件であり、増加傾向であった。交通事故統計上、健康起因事故に関する項目として、てんかん、心臓麻痺および脳血管障害に分類されている。分析した結果、各項目はほぼ同じ割合を占めていた。約95%が一般道で発生し、車両単独事故や追突事故が多い特徴がみられた。ドライバーも事業者も安心して安全に自動車を利用できるためには、運転前、運転中および発症後の3段階それぞれに「安心安全」運転支援が必要であると考える。運転前の健康管理、ストレスの少ない通常走行から、体調不良の予兆を検知、さらに緊急時の対応に分けて安全装備を構築していくことが求められる。

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© 2021 一般社団法人 日本交通科学学会
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