抄録
高速道路は高速走行となるため、事故が発生した場合は重大事故に発展することが多い。さらにトンネル内の事故では、救助活動、救命処置および搬送において工夫した対応が求められる。そこで、新たに建設された近畿自動車道紀勢線の開通前に、同道路上のトンネル内で多重事故が発生したという想定で合同訓練を行い、ドクターカーとともに参加した。ドクターカーの医療スタッフは医師2名、看護師1名の編成であったため、現場指揮本部に到着報告をしたのち医師1名は現場指揮本部に入り、もう1名の医師と看護師は現場救護所での診療を開始した。救急隊による一次トリアージにより重症2名、中等症3名、軽症3名と判断された後、看護師が二次トリアージを行い、緊急度の高い傷病者から順に安定化処置を行った。看護師が1名しかいないため、処置を行う際は救護所に配置された救急救命士にも協力を仰いだ。走行可能な状況を加味したうえで搬送先を決定し、いずれも救急車で搬送した。高速道路のトンネル内事故では、救助・救急活動を行ううえで非常に過酷な環境であること、救命処置を行うのに困難が予想されること、二次災害への対応が必要であること、状況に応じて臨機応変に搬送先を選定する必要があるなど、特異的な対応が必要になる。したがって、医療従事者が、このような想定下での訓練に参加することで、円滑な病院前救護活動が実践できると考え、その意義は高いと思われた。