抄録 歯科臨床の経験のない第3学年後期の学生に対して, 傾聴技法を用いた初診時の医療面接をロールプレイで体験させる前に, 今回開発したワークシートを用いた演習を導入した. ワークシートは表形式を用いて作成したものをA3判横の用紙に印刷したものである. 横1行に, 左から (1) 病歴聴取の項目, (2) 歯科医師の質問, (3) 患者の回答, (4) 歯科医師の応答の4つの欄が設けられている. なお, (1) と (3) の文面はすでに印刷されており, (2) と (4) は空欄となっており, ここに学生が記入する. この1行を1つのユニットとして位置づけ, 34行の歯科医師の質問と患者の回答, 歯科医師の応答欄, それに要約を2カ所 (面接の途中と最後 : 会話番号なし) 設け, あわせて36行で初診時医療面接 (急性症状) の場面を記述するものである.
本ワークシート開発の視点は以下の通りである.
①歯科診断学の専門知識をまだ習得していなくとも一応の質問作成は可能であること. すなわち, すでに提示されている患者の回答を引き出すための質問を考えるという方法によるためである.
②学生は医療面接の構造に沿った反応をしており, 医療面接の大きな流れを, 紙上ではあるが体験できるものであること.
③疾患を探る伝統的な診断法と, 患者の心理的体験を尊重しラポールを形成していく2つのアプローチの統合を目指す患者中心医療への導入となること.
学生に本ワークシートを実施し分析した結果, 本ワークシートによる紙上応答訓練を行うことは有効であることが示された.