2017 年 33 巻 3 号 p. 177-183
抄録 歯内療法学における臨床基礎実習は, 抜去歯や髄腔付模型歯を用いて臨床実習前の基本的技能の習得を目的に実施されている.
本研究の目的は, 根管充塡技能の習得度を評価する際に用いる公平かつ再現性のある評価を行うための模型歯ならびに顎模型を開発し, 有用性を検討することである.
歯内療法実習の指導者から, 模型歯ならびに顎模型が具備すべき条件に関する意見を聴取し試作模型歯ならびに専用顎模型を作製した. 歯学部4年次の6名の学生に対し, 試作模型歯を用いた根管充塡を指示し, 複数の評価者によりプロセス評価ならびにプロダクト評価を行った. 実施後, 受験者に対するアンケートの結果と評価者の意見や感想を加味して, 試作模型歯の改良内容を決定した. 模型歯は受験者にとって扱いやすく, プロセス評価も容易な, 7/100根管テーパーならびに根尖部が40号の根管を有する下顎第一小臼歯とした. 根管充塡の状況を外側の4方向から評価できるように, 歯根部はアクリルレジン製の直方体とし, 評価のばらつきを少なくするために指標とするスリットを付与した. 専用顎模型は模型歯を短時間で着脱できる機能を有し, 既存のファントムに装着できる形態とした. 改良した試作模型歯では, 5分以内で根管充塡が可能であり, 客観的で公平かつ再現性のある評価ができた. また専用顎模型の使用によって模型歯は数秒で着脱が可能であり, 多数の受験者に対しても繰り返しの使用が可能であった.