抄録 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座クラウンブリッジ補綴学分野では卒前臨床実習時に2人1組の学生に交互に患者役と歯科医師役をさせ初診患者の医療面接のOSCE形式の演習を行っている. 医療面接での模擬患者シナリオを準備するため, さまざまなバリエーションのあるシナリオを出力する 「模擬患者シナリオ作成プログラム」 を開発し, 作成されたシナリオを患者役の学生に読ませている. 今回, シナリオの内容と量が適切であるかを確認するため, シナリオが理解できたか, シナリオの患者に感情移入できたか, 内容量は適切だったかについて演習終了後にアンケートを実施した.
理解と患者への感情移入は4段階, 内容量は5段階で, 2018年度大阪大学歯学部5年次学生54名を対象として回答を求めた.
理解は54名中の45名 (83.3%) が 「十分に理解できた」 と回答し, 理解しやすさにおおむね問題はなかったと思われた. 患者への感情移入は 「十分にできた」 と回答した者が30名 (55.6%) で, 感情移入度の低い学生が半数近くみられた. 内容量は 「詳しすぎも簡易化しすぎもない」 29名 (53.7%) を中心に, やや 「少し詳しい」 に寄った分布を示した.
シナリオごとに理解しやすさや内容量に違いがあるため, ある程度のばらつきはあるが, シナリオ自体に大きな問題はなかったと判断してよいと思われた. また, 十分には感情移入できなかった学生が半数近く存在し, 学生自身にシナリオのような問題が起きた経験がないことの影響があると考えられた.