抄録 適合診査材を用いた義歯調整は高頻度に行われる基本的な歯科治療であり, その修得は日々の臨床経験によるところが大きく, 効果的な教育方法は確立されていない. そこで経験の浅いstudent dentistや研修歯科医に対して義歯内面の調整が必要となる 「強圧部分」 の判断能力を教育する方法について検討した.
対象者は令和2, 3年度に新潟大学医歯学総合病院で研修を行った研修歯科医39名と指導歯科医5名とした. 下顎無歯顎模型に適合する全部床義歯レプリカを作成し, 内面に凸部を付与した. レプリカ内面に粘膜調整材料を塗布して圧接した. 対象者はこの課題用レプリカの 「強圧部分」 を回答した. その後, 対象者には指導用レプリカを用いて, ①対象者が説明した 「強圧部分」 に対して指導者がフィードバックを行う, ②指導者が対象者に対し 「強圧部分」 を説明する, ③対象者はレプリカ内面の写真を用いた視覚教材で自主学習する, この3つの教育方法のうちいずれか1つを行った. 7日以上経過後, 再び同じ課題に対して回答した課題用レプリカの 「強圧部分」 について, それぞれの正解率と教育方法, 教育前後の個人正解率を分散分析と多重比較を用いて統計学的に分析した.
その結果, 各指導法で正解率は教育前に比べて上昇し, 各教育方法において教育後の個人正解率は上昇した. 以上の結果から, 義歯の適合診査の教育には今回設定した教育方法を組み合わせることが効果的であると考えられた.