日本歯科医学教育学会雑誌
Online ISSN : 2433-1651
Print ISSN : 0914-5133
研究報告
災害歯科医学に対する教育の有無は研修歯科医の意識に影響を与えているか?―2019, 2020および2021年度広島大学病院研修歯科医への質問紙から―
岡 広子西 裕美大林 泰二柴 秀樹河口 浩之
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2022 年 38 巻 1 号 p. 43-51

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抄録

抄録 近年,災害歯科医学に関する内容が日本の歯学教育モデル・コア・カリキュラムへ記載され国家試験の出題項目として示されるようになり,卒前教育においても災害医療や災害歯科医学が扱われるようになってきた.しかしながら,災害歯科医学教育に関する資料や報告はまだ少なく,実際に歯学部の学生が卒前教育で学ぶ災害歯科医学の具体的な教育内容やその学習効果については報告がほとんどない.そこで,本学大学病院の研修歯科医(2019年度,2020年度,2021年度)を対象に,研修初期に災害歯科医学に関する質問紙調査を実施した.

 その結果,多くの研修歯科医が「災害歯科医学」を歯学部の学生時代に学習したという本人の自覚の有無にかかわらず「身元確認」や「口腔ケア」を災害時の歯科の役割として認識していた.また,災害対応あるいは身元確認に関連する法律や歯学教育モデル・コア・カリキュラムに記載されている語句については「知らない」との回答は3割以下で,災害歯科医学に関する内容はなんらかのかたちで卒前に学習しているという背景があるものと推察された.一方で,大学病院の事業継続計画(BCP)の存在やBCPの内容を理解している研修歯科医はごくわずかであった.卒後教育においては,卒前の基盤知識をもとに,災害対応全体を俯瞰し災害時の多職種連携や被災現場で医療人として災害対応にあたる具体的な知識や行動について学んでいくことも必要であると考えられた.

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