2025 年 41 巻 1 号 p. 11-19
抄録 九州大学歯学部では,従来の臨床実習を見直して,診療参加型臨床実習のさらなる充実と臨床能力の担保につながる評価方法の確立に努めるため,2017年度から新体制の臨床実習を開始し,その後も継続的に改変を行っている.本研究は,2016年度から2022年度までの7年間に在籍していた臨床実習生を対象に実施したアンケート調査結果を後ろ向きに分析することで,臨床実習に関する臨床実習生の意識・考え方を把握し,臨床実習の充実および臨床実習生の満足度について評価することを目的とした.アンケートは,「臨床実習全般」「評価方法」ほか全8項目について5段階のリッカート尺度で回答させた.また,「自験例」「COVID–19」ほか全5項目について自由記載させた.5段階評価についてはχ2検定を用いて年度間の比較を行い,自由記載についてはテキストマイニングの手法により分析を行った.7年間の臨床実習生340名のうち303名の回答が得られ,回収率は89.1%であった.5段階評価では,新体制に移行した2017年度は臨床実習生に混乱を与えたが,その後は年度を追うごとに「満足に行うことができた」とする回答が上昇傾向にあった.また,7年間自由記載で「指導教員」と「学生」の共起回数が多いことから,臨床実習生にとって指導教員との関係性は,臨床実習を行ううえで重要であると考えられた.
本研究の結果から,本学の臨床実習は検討すべき課題はあるものの,継続的な改変により順調に改善されていると思われる.