2026 年 42 巻 2 号 p. 53-60
抄録 歯学部初年次におけるシネメデュケーションが,認知症を含む高齢患者への共感およびプロフェッショナリズム意識に与える影響を検討することを目的とした.日本歯科大学新潟生命歯学部第1学年81名を対象に,映画『長いお別れ』(2019年)を約50分に編集した映像を視聴し,視聴後に5~6名の小グループで討議を行った.授業開始時(Pre)と終了時(Post)に14項目の自己評価式質問票(Likert 1~5)と自由記載を回収した.定量データは対応のあるt検定で解析し,補助解析としてHolm法による多重比較補正と効果量(Cohen’s dz)を算出した.自由記載はテーマ分析を行った.その結果,未補正では14項目中9項目で有意な上昇を認め,Holm補正後も7項目で有意差が保たれた.特に,患者・家族の立場を具体的に想像する力,非言語的コミュニケーションの重要性,学習動機,プロフェッショナリズム意識に関連する項目で比較的大きな変化が認められた.自由記載では,認知症の理解,自分事化・将来像,共感の深化に関する記述が増加し,定量結果とおおむね整合した.以上より,映像視聴と小グループ討議を組み合わせたシネメデュケーションは,初年次の情意領域学習を促進し,認知症ケアに関連する共感・プロフェッショナリズムの涵養に寄与しうる可能性が示唆された.