口腔衛生学会雑誌
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原著
児童生徒を対象とした保健行動評価のためのDelphi法の応用
鏡 宣昭眞木 吉信杉原 直樹高江洲 義矩
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1997 年 47 巻 1 号 p. 36-43

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抄録

小学校4年生,6年生および中学2年生の児童生徒の歯・口腔の認識レベルを調べるためにDelphi法の応用を試みた。すなわち,1回目の認識調査に対して同一質問を3度繰り返すことによって,その回答に変動があるか否かを観察するものである。これは,漠然とした事柄や考えが再三の質問によって確かめられることにもなり,一種の収束思考の過程をたどることでもある。本来のDelphi法は,専門家を対象に行う技法であるが,本研究ではあえて,児童生徒を対象に応用し,アンケート調査の妥当性と行動様式および認識レベルを検討した。歯みがき行動の設問に対して「いつも自分からみがく」と回答した中学2年生は80%,小学校6年生は70%,小学校4年生は40%であった。受療行動に対する設問では,小学校6年生と4年生で「いわれてしかたなく行く」よりも「自分から申し出てつれて行ってもらう」が高い回答を示している。学童期から青年期にかけての児童生徒を対象としたアンケート調査では,日常生活行動に関する設問は,いずれの内容も回答率に大きな差が見られなかった。これは,日常の生活行動の普遍的な行動様式では無意識のうちにも習慣化しているためと考えられる。しかし,受診・受療行動に関する設問については,言葉の意味や曖昧な表現と受け取られるものなどによる回答の変化が大きかった。

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© 1997 一般社団法人 口腔衛生学会
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