口腔衛生学会雑誌
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原著
イヌ歯肉の酸素充足度に及ぼす歯ブラシによる機械的刺激の効果 : ブラッシング圧およびブラッシング時間の影響
田中 宗雄埴岡 隆雫石 聰
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1997 年 47 巻 1 号 p. 44-50

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抄録

歯ブラシによる付着歯肉への機械的刺激後の歯肉ヘモグロビン酸素飽和度と歯肉組織の酸素分圧を測定し,機械的刺激の条件を変えた場合の効果を比較した。健常歯肉を有するイヌ10頭の口腔を分割し,50g,200g,400gの歯ブラシ圧で10秒間,200 gの歯ブラシ圧で5秒間,30秒間の5つの条件での加圧振動による付着歯肉への機械的刺激を行う部位と対照として刺激を行わない部位を割り付けた。ヘモグロビン酸素飽和度は反射スペクトル解析法により,歯肉酸素分圧は微小酸素電極を用いたポーラログラフィ法により測定した。酸素飽和度,歯肉酸素分圧ともに歯肉刺激直後は減少したが,5分後には刺激前の値以上に上昇し,ピークに達した後,ベースラインに徐々に近づいた。両指標ともに200g,10秒の機械的刺激後に上昇が最も持続し,酸素飽和度では約70分間,酸素分圧では90分経過しても有意の上昇が認められた。この時,酸素飽和度の上昇のピークは刺激前の約5〜10%であったが,酸案分庄の上昇は40%以上に達した。他の刺激条件下では,酸素飽和度の変化は小さかったが,酸素分圧については,25〜35%の上昇が認められ,有意の上昇は60〜75分間持続していた。対照部位ではほとんど変化は認められなかった。以上のことから,歯ブラシによる付着歯肉への加圧振動は,歯肉酸素分圧の長時間の上昇をもたらし,歯肉への酸素充足度を向上させることが示唆された。

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© 1997 一般社団法人 口腔衛生学会
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