1997 年 47 巻 1 号 p. 75-82
病院歯科診療室における浮遊粉塵の構成成分を把握することを目的として,補綴科および保存科診療室において診療時間内と診療時間外に集塵を行い,X線回折法,電子線マイクロアナライザ(EPMA)ならびに,走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。 粉塵の採取は慣性衝突方式の分粒装置を装着した労研TRサンプラーにガラス繊維ろ紙を装着し,吸引量20l/minで行った。X線回折法による粉塵の構成成分の物質同定には,歯科診療に由来する発塵物質を選び,これらの標準物質の回折角と粉塵の回折角を対比することにより粉塵の構成成分の検索を行った。以下のとおりの成績が得られた。1.歯科診療室の粉塵には印象材,石膏,歯科用セメント類,歯科用金属類,歯の切削など歯科診療に由来するものが含まれていた。また,診療時間外の粉塵にも歯科診療由来の成分が認められた。2.診療に由来する粉塵の種類は補綴科の方が保存科より多く,エアコン稼働の効果はこれらの粉塵の構成成分を減少させることが示された。3.EPMAにより歯科診療室の粉塵にはSi,Ca,K,Ba,Znが含まれることが認められた。また,その他にAg,Sn,Feなども検出された。4.SEM像では種々の形の粉塵が観察された。