口腔衛生学会雑誌
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原著
保健所におけるフッ化物歯面塗布事業に関する実態調査
荒川 浩久黒羽 加寿美岩瀬 寧下井戸 さよ三畑 光代戸田 真司串田 守飯塚 喜一可児 瑞夫
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1997 年 47 巻 2 号 p. 179-191

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抄録

フッ化物歯面塗布法は,歯科医師または歯科衛生士が実施する優れたう蝕予防手段の1つである。しかし,以前から汎用されてきた塗布用トレーが人手困難になったり,母子保健事業の市町村への権限移譲に伴い,保健所におけるフッ化物塗布事業も影響を受けることが予想される。これらの点を背景に,フッ化物塗布事業の実施状況や問題点を明らかにすることを目的に,全国の保健所を対象に質問紙調査を実施した。これらの結果は,今後の歯科公衆衛生におけるフッ化物歯面塗布事業の方向性を検討するための大切な資料になろう。1993年の1月中旬に,946ヵ所の保健所に質問紙を郵送し,2ヵ月後までに記入して返送してもらった。回収率は77.6%であった。全体では,現在フッ化物塗布事業を実施している所が43.7‰過去に実施していた所が3.2‰まったく実施していない所が53.0%であった。現在実施している所で使用している塗布剤はリン酸酸性フッ化物溶液が59.0%と最も多く,次にフッ化ナトリウム溶液が30.7‰リン酸酸性フッ化物ゲルは24.2%と少なかった。塗布法は綿球法が78.2%と最も多く,次にイオン導入法が30.5‰トレー法7.8%,歯ブラシ法が4.9%であった。塗布事業について積極的にPR活動を行っていたり,フッ化物応用に関する保健指導を実施している所の方が実施していない所よりも,実施人数,実施年数ともに多いという結果が示された。以前実施していた所が中止した理由は,歯科専門職の配置がなくなった(22.7%),時間的に余裕がない(18.2%),歯科医師会に委託した(18.2%),フッ化物応用以外のう蝕予防法に転換した(13.6%),予算措置のため(9.1%),市町村で実施を始めた(9.1%),予防効果が確認できなかった(9.1%)であった。まだ実施したことがない理由としては,設備,人員,時間的余裕がない(39.2%),事業としての予算措置がない(20.9%),市町村で実施しているから(21.2%),歯科医師会で実施しているから(8.0%),反対運動があるから(6.4%),保健教育や保健指導に重点を置いているから(6.1%),予防効果を確信していないから(5.5%)であった。

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© 1997 一般社団法人 口腔衛生学会
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