口腔衛生学会雑誌
Online ISSN : 2189-7379
Print ISSN : 0023-2831
ISSN-L : 0023-2831
原著
市町村の歯科保健対策が乳歯う蝕の有病状況に及ぼす影響について
渡辺 猛中村 宗達
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 47 巻 2 号 p. 218-227

詳細
抄録

市町村の歯科保健対策が,乳歯う蝕の減少ならびに幼児と保護者の歯科保健知識や歯科保健行動の改善に,地域特性を越えて寄与しているか否かを把握することを目的とした。静岡県における市町村別の3歳児乳歯う蝕有病状況や4・5歳児とその保護者の歯科保健知識・行動に関する情報を目的変数とし,地域特性ならびに歯科保健対策に関する情報を説明変数として重回帰分析変数増加法にて解析を加えた。乳歯う蝕の有病状況は地域特性によって良く説明され,市町村の歯科保健対策(歯科医師や歯科衛生士の市町村等への配置,歯科保健検討会議の開催,歯科保健計画の策定,母子歯科保健事業の評価,妊婦歯科保健事業・1歳6ヵ月児健康診査における歯科医師や歯科衛生士による集団指導・乳幼児歯科管理事業・フッ化物歯面塗布の実施)の影響を受けている様子は確認できなかった。一方,幼児と保護者の歯科保健知識・行動は地域特性と歯科保健対策によって良く説明され,歯科保健対策の中では妊婦歯科保健事業とフッ化物歯面塗布の影響を受けている可能性が示唆された。以上の結果より,市町村の歯科保健対策が,幼児と保護者の歯科保健知識・行動の改善に地域特性を越えて寄与している可能性はあるものの,乳歯う蝕の減少に寄与している様子はうかがえなかった。

著者関連情報
© 1997 一般社団法人 口腔衛生学会
前の記事
feedback
Top