口腔衛生学会雑誌
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原著
港町歯科における在日外国人の歯科受療行動に関する実態調査
大鶴 次郎阿部 智品田 佳世子川口 陽子
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2003 年 53 巻 1 号 p. 30-37

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抄録

平成9年9月から平成13年3月の期間に港町歯科を受診した成人患者を,日本人(407名)と外国人(562名)に分けて分析し,在日外国人に関する歯科医療の実態について調査を行った.平均年齢は,日本人46.9歳に対し外国人は38.5歳と若かった.外国人の出身地域はフィリピンや韓国などのアジアが70%であった.使用言語は英語を話す者が最も多かったが,英語圏以外の外国人患者が2/3を占めていた.職種別にみると,建築や工事現場などの肉体労働者が約30%で最も多く,次いで飲食などのサービス産業に従事しているものが10%であった.健康保険の加入者は約1割で,半数以上が「みなとまち健康互助会」の会員であった.外国人の平均通院回数は2.8回で,日本人の1/2以下であった.外国人の1回当たりの診療費は約5,000円と日本人の約7,000円よりも低かったが,自己負担金の割合は87%と日本人(26%)より高かった.本調査において,平均年齢,横浜市内に住む者の割合,健康保険の加入状況,平均通院回数,診療費,自己負担金に,日本人と外国人のあいだに有意差が認められた.受診した外国人患者は緊急治療を求めて歯科医院を受診する傾向が認められ,このような人々に対してセルフケア,定期歯科健診,予防処置などの重要性を健康教育で伝えていくことが大切だと示唆された.また,現在の互助会の制度を医療経済的な面から検討していくことも必要と考えられた.

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© 2003 一般社団法人 口腔衛生学会
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