口腔衛生学会雑誌
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論説
大正から昭和初期における学校歯科保健教育活動小史 : I. 社会の動向
渡邊 貢次鈴木 千春
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2003 年 53 巻 2 号 p. 83-90

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抄録

1872年の「学制」の制定は,積極的に欧米文化・教育の導入をすすめ,従来の日本型文化・教育に大きな影響を与えた.学校衛生もこの流れのなかに含まれ,医学的学校衛生から教育的学校衛生へと変遷していった.学校衛生教育は明治維新政策にのり,どちらかというと官主導あるいは官と一体で進められてきており,医学者・教育行政者により明治中期から大正期に広く展開されていくようになったが,学校歯科衛生教育についていえば遅れがちであった.その理由の1つとしては,歯科領域は教育的医療であるという歯学関係者の思い入れとは別に,教育行政的に学校健康教育にかかわる諸課題であるとの認識が,熟すのが遅れたこともあげられよう.総じていえば,学校歯科保健領域は歯科医界・民間企業が主導となって活発に進められ,その成果が教育現場に浸透してきたといえる.すなわち,歯科衛生教育は大正初期に学校の外部からはじまり,しだいに学校内活動が定着化し,昭和期に入ると,教員や学校組織として本格的に取り組んでいくことがみられるようになった.しかし,学校衛生教育も戦時体制の影響を受け,これまでの学校で培われた健康教育は,身体個性の育成から離れた画一的で国家主義的な側面も現れてきた.

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© 2003 一般社団法人 口腔衛生学会
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