口腔衛生学会雑誌
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原著
唾液のリン酸カルシウム沈殿物形成抑制能の検査法
日高 三郎松尾 忠行大内 紘三
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2003 年 53 巻 2 号 p. 137-144

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抄録

著者らはpHメーターを用いた,ヒト全唾液のリン酸カルシウム沈殿物形成抑制能の測定法(pH低落法)を開発し理論づけを行ってきたが,今回はこれを簡便に行うために,pH指示薬ブロムチモールブルー(BTB)を使用することとし,pH低落法との比較を行った.色調変化で判定するBTB法では,pH差が大きいことが必要だが,NaF無添加でpH変化がpH7.4から6.8(ΔpH=0.6)だったのに対し,250μMのNaF添加では,pHは7.4から6.3(ΔpH=1.1)まで低下し,BTBの青色-黄緑色-黄色にわたる色調変化を観察できた.唾液濃度が2.5,5.0,7.5%(v/v)のとき,250μMのNaF添加条件で,37℃,40分温浴後,色調はそれぞれ黄色,青緑色,青色となった.このことは,唾液によるリン酸カルシウム沈殿物形成抑制能をBTBの色調変化により半定量的に評価できることを示唆している.そこで,実際に10名の被検者の唾液を用いて本法を実施したところ,誘導時間(pH低落法:本文参照)と色見本を用いたpH(BTB法)との間の相関係数(r)は唾液濃度が1.25〜2.50%(v/v)のとき,0.79〜0.86となった.このことは,BTB法で,個人唾液の口腔内リン酸カルシウム沈殿物形成(再石灰化と歯石形成)に対する抑制効果を簡便に評価できることを示唆している.

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© 2003 一般社団法人 口腔衛生学会
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