2017 年 67 巻 2 号 p. 70-76
本研究では,気管内挿管により人工呼吸管理を受けている患者のICU入室後の鼻腔および気管内細菌の臨床検査データを解析し,その実態を把握するとともに,その経時的変化や意識レベルとの関連性を明らかにすることを目的とした.香川大学医学部附属病院ICUにおいて,院内肺炎や市中肺炎の起炎菌として監視培養の対象としている『要注意菌』8菌種について,気管内採痰および鼻腔スワブ中の検出状況を経時的に調べた.その結果,挿管初日の検査において32.7%の患者の気管内採痰に要注意菌が検出された.さらに,初日の検査で気管内に要注意菌が検出されなかった患者においても経時的に要注意菌の検出率が上昇することが明らかとなった.気管内で要注意菌が検出されるケースのほとんどで鼻腔内でも要注意菌が検出されることがわかった.また,患者の意識レベルと要注意菌の検出率の関連性を調べたところ,昏睡状態にある患者はそうでない患者に比べて,鼻腔内での要注意菌検出率が有意に高いことが明らかとなった(χ2 検定;p<0.05).気管内での肺炎原因菌の定着・増殖を阻止するには,口腔,咽頭,鼻腔に生息する細菌数を減らすことが重要と考えられる.これらのことから,意識障害が遷延化し挿管期間が長くなると見込まれる患者に対しては,より一層の徹底した鼻咽腔や口腔の衛生管理が必要であることが示唆された.また,挿管初日にある程度の細菌が気管内で検出されたことからも,挿管前の可能な限りの口腔ケアが肺炎リスクを減らすために重要であると考えられた.