口腔衛生学会雑誌
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67 巻, 2 号
平成29年4月
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 有永 靖, 岩﨑 正則, 粟野 秀慈, 伊藤 加代子, 吉田 明弘, 角田 聡子, 邵 仁浩, 安細 敏弘
    2017 年 67 巻 2 号 p. 64-69
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー

     透析患者では唾液量分泌低下が高頻度で認められる.本横断研究では透析患者における唾液分泌量低下と健康関連quality of life(HRQOL)の関連を,包括的HRQOL尺度MOS Short-Form 36-Item Health Survey(SF-36)を用いて検討した.2008年5月から7月に透析専門病院にて血液透析治療を受けた患者347名中,本研究への同意が得られ,データの揃った212名を対象とした.安静時唾液分泌量が0.1 ml/min 以下かつ刺激時唾液分泌量が1.0 ml/min 以下の者を唾液分泌量低下と定義した.唾液分泌量低下がSF-36のサマリースコア,および下位尺度偏差得点に与える影響について一般線形モデルを用いて評価した.年齢,性別,透析原疾患,透析期間,現病歴,既往歴,body mass index,喫煙状況,飲酒状況を共変量として用いた.唾液分泌量低下と定義された者は103名,全体の48.6%であった.唾液分泌量低下とSF-36の下位尺度偏差得点である身体機能,身体的日常役割機能,全体的健康感,社会生活機能,および身体的側面のQOLサマリースコアとの間に負の関連を認めた(p<0.05).透析患者において唾液量分泌低下はHRQOLと関連することが示された.

  • 山下 亜矢子, 吉岡 昌美, 大林 由美子, 三宅 実
    2017 年 67 巻 2 号 p. 70-76
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー

     本研究では,気管内挿管により人工呼吸管理を受けている患者のICU入室後の鼻腔および気管内細菌の臨床検査データを解析し,その実態を把握するとともに,その経時的変化や意識レベルとの関連性を明らかにすることを目的とした.香川大学医学部附属病院ICUにおいて,院内肺炎や市中肺炎の起炎菌として監視培養の対象としている『要注意菌』8菌種について,気管内採痰および鼻腔スワブ中の検出状況を経時的に調べた.その結果,挿管初日の検査において32.7%の患者の気管内採痰に要注意菌が検出された.さらに,初日の検査で気管内に要注意菌が検出されなかった患者においても経時的に要注意菌の検出率が上昇することが明らかとなった.気管内で要注意菌が検出されるケースのほとんどで鼻腔内でも要注意菌が検出されることがわかった.また,患者の意識レベルと要注意菌の検出率の関連性を調べたところ,昏睡状態にある患者はそうでない患者に比べて,鼻腔内での要注意菌検出率が有意に高いことが明らかとなった(χ2 検定;p<0.05).気管内での肺炎原因菌の定着・増殖を阻止するには,口腔,咽頭,鼻腔に生息する細菌数を減らすことが重要と考えられる.これらのことから,意識障害が遷延化し挿管期間が長くなると見込まれる患者に対しては,より一層の徹底した鼻咽腔や口腔の衛生管理が必要であることが示唆された.また,挿管初日にある程度の細菌が気管内で検出されたことからも,挿管前の可能な限りの口腔ケアが肺炎リスクを減らすために重要であると考えられた.

  • 伊藤 さとみ, 前田 裕一, 吉田 圭司郎
    2017 年 67 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー

     タイミンタチバナ抽出物は口臭原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC)の発生をインビトロで抑制することが明らかにされている.本研究はタイミンタチバナ抽出物配合ガムの単回摂取によるVSC の低減効果と有効な配合量を明らかにするために,19名の健常人を被験者としてダブルブラインドクロスオーバー試験を実施した.ガム摂取前,5分間のガム咀嚼直後,1,2時間後の口気中VSC濃度をガスクロマトグラフィーで測定した.試験ガムはタイミンタチバナ抽出物をガム1 粒あたり10.0, 5.0または2.5 mg 配合し,被験者は一回に試験ガムまたは対照ガム各2粒を摂取した.ウォッシュアウト期間は1週間とした.評価の結果,高用量群(20.0 mg/2粒)においてTotal VSC,硫化水素(H2S),メチルメルカプタン(CH3SH)について,摂取1時間後に摂取前に対して有意な減少が認められた.中用量群(10.0 mg/2粒)では,CH3SHで摂取1時間後に摂取前に対して減少傾向を示し,低用量群(5.0 mg/2粒)では摂取1時間後にCH3SHの有意な減少が認められた.対照群においては,摂取前に対して有意な変化は認められなかった.以上のことより,タイミンタチバナ抽出物配合ガムの単回摂取により,一時的にVSCが減少することが確認された.VSCを効果的に抑制するためには,ガムに20.0 mg以上の抽出物を配合する必要があると考えられた.

報告
  • 吉岡 昌美, 板東 高志, 白山 靖彦, 井本 逸勢, 柳沢 志津子, 横山 希実, 竹内 祐子, 日野出 大輔
    2017 年 67 巻 2 号 p. 84-88
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー

     透析患者は飲水制限,糖尿病の合併などにより口腔乾燥や歯周病のリスクが高い.透析患者の多くはかかりつけ歯科医院をもつものの,定期的に歯科を受診している者は比較的少なく,また透析実施医療機関において歯科受診が勧奨されているケースは極めて少ない.このような現状を踏まえ,透析患者の口腔管理に関して,受け入れ側となる歯科医療職と常に患者に接している医科スタッフの双方が共有すべき情報を記載した『医療者向けリーフレット』と,透析患者の歯科受診勧奨の介入ツールとしての『患者向けリーフレット』を開発した.これらのリーフレットを徳島県歯科医師会の会員に対して郵送し,リーフレットの有用性について質問紙調査を行った.その結果,9割以上が“とても役立つ”もしくは“役立つ”と回答した.以上のことから今回われわれが開発したリーフレットは透析患者の口腔管理を担当する歯科医療職にとって有用である可能性が示された.

  • 西辻 直之, 古藤 真実, 福澤 洋一, 矢吹 義秀, 上谷 公之, 久保 宏史, 吉野 浩和, 長井 博昭, 中曽根 隆一, 矢島 正隆, ...
    2017 年 67 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー

     (公社)東京都港区芝歯科医師会は,JR新橋駅西口SL広場において,事前の告知や当日の呼びかけに応じた成人男女250名を対象に,「歯周病予防のための新唾液検査事業」を5年間にわたり4回実施した.事業目的は,歯周病のスクリーニング可能な唾液検査の受診を契機に,受診者の歯周病への理解を促し,検診の重要性を啓発することである.

     各受診者から採取した唾液を用いて生化学検査を行い,結果を受診者に郵送した.また,事後アンケートを実施し,「受診したきっかけは何か」,「唾液検査は簡単か」,「唾液を採取することに対して抵抗があるか」,「次回の検査も受けたいか」,「検査結果票はみやすいか」,「検査結果をみて歯科を受診するか」,「検査結果をみて歯周病について関心が深まったか」の7項目への回答を求めた.

     事後アンケートで回答者(回収率;年平均22.1%)の9割が選択した項目は,「この検査が簡単だと感じた」,「次回も受けたいと思う」および「検査により歯周病に興味をもった」であった.以上より,唾液検査は歯周病への関心を高めるとともに,受診契機の一要因となることがわかった.

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