口腔衛生学会雑誌
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原著
血液透析患者における現在歯数および咬合支持状態と栄養状態との関連性
山崎 明香吉岡 昌美板東 高志日野出 大輔
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2018 年 68 巻 1 号 p. 2-8

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抄録

 近年透析患者の高齢化が進んでおり,透析患者における低栄養と生命予後の関連が報告されている.低栄養の主な原因は食事摂取量の低下と考えられているが,これまでの研究で歯科的要因の関与については十分に検討されていない.本研究では,透析患者の栄養状態と現在歯数および咬合支持状態との関連を明らかにすることを目的として,透析医療機関に併設する歯科口腔外科を受診した透析歴1年以上の血液透析患者155名を対象に歯科初診時の口腔状態と直近の栄養指標を横断的に調査し,その関連性について統計学的に検討した.その結果,現在歯数および健全歯根膜表面積より算出される咬合支持能力指数(Normal Periodontal Ligament Index: NPLI)と標準化蛋白異化率(normalized protein catabolic rate: nPCR)の間に有意な正の相関を認めた(Spearman 順位相関係数検定,p<0.05).また,Eichner分類で群分けした場合(A群 vs B/C群),nPCRは2群間で有意な差を認めた(0.97±0.20 vs 0.90±0.17, スチューデントt 検定,p=0.023).さらに,二項ロジスティック回帰分析の結果,nPCRが0.8未満であることに現在歯数やEichner 分類B/C 群が関連することが示された(それぞれオッズ比(95% 信頼区間),p値:0.945(0.907–0.985), p=0.007,2.464(1.079–5.626),p=0.032).nPCRはタンパク質摂取量を反映する指標であることから,血液透析患者において歯の喪失や不十分な咬合支持状態がタンパク質摂取不足に繋がる可能性が示唆された.本研究の結果から,血液透析患者の低栄養のリスクとして,歯数や咬合支持など口腔環境を考慮する必要があることが示唆された.

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© 2018 一般社団法人 口腔衛生学会
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