2018 年 68 巻 1 号 p. 9-14
メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome: MetS)のリスク因子として早食いが挙げられる.また近年,MetSは歯の喪失やう蝕など口腔内状態との関連も注目されている.しかし,MetS,早食いおよび口腔内状態を総合的に検討した報告は少ない.そこで,本縦断研究は,職域における早食いおよび口腔内状態とMetS発症との関連について検討することを目的とした.対象者は,某事業所における平成24・27年度定期健診をどちらも受診した従業員のうち,平成24年度MetSに該当しなかった男性114名(36〜63歳)を分析対象者とした.診査項目は,身長,体重,腹囲,血圧,空腹時血糖値,中性脂肪,HDLコレステロール値,口腔内状態,生活習慣(早食いの有無,食・運動・飲酒・喫煙習慣)とした.平成27年度健診結果から,MetS発症群と非発症群に分け,早食いの習慣および口腔内状態との関連を分析した.統計分析にはχ2検定,Fisherの直接法およびMann-Whitney U検定を用いた.3年後にMetSを発症した者(16名)は,全員早食いの自覚があった.また,MetS発症において,早食いと腹囲異常による相加効果がみられた.結論として,早食いで腹囲異常のある者はMetS 発症のリスクが高いことがわかった.一方で,口腔内状態との直接的な関連はみられなかった.