症例は68歳の男性で,鹿児島大学病院にて食道癌stage Ⅱに対する手術および化学放射線療法施行後,繰り返す誤嚥性肺炎を認めていた.化学放射線療法から3年後に両側反回神経麻痺の診断のもと緊急入院,気管切開が施行され,術後,気管カニューレ管理となり退院したが,その後も誤嚥性肺炎による入退院を繰り返していた.誤嚥性肺炎予防を目的として,気管カニューレをレティナⓇへ変更すると同時に口腔衛生管理にて経過観察を行う方針となり口腔保健科へ紹介された.
初診時の患者の口腔衛生状態は極めて不良であり,また口腔内細菌が誤嚥性肺炎発症に関連しているという認識は低かった.まずは誤嚥性肺炎の知識に関する患者教育を行い,徹底したプラークコントロールを実現するために本人および配偶者へのブラッシング指導を行ったところ,徐々に口腔衛生状態の改善を認めた.気管カニューレの変更および歯科管理の開始から現在まで,食道狭窄に起因する肺炎の再発を認めたが,口腔衛生管理の点からは患者の満足度は高く保たれている.
誤嚥性肺炎による入退院を繰り返していたという過去の経緯から,口腔衛生指導が正の強化因子として口腔衛生習慣の動機付けに機能したこと,ADLが自立している患者本人のセルフケアだけではなく配偶者による献身的なケアの有効性が確認されたこと,さらに周術期口腔機能管理における退院後のフォローの重要性を再認識した.