2019 年 69 巻 1 号 p. 34-42
本研究では,1歳6か月児健康診査における乳歯の萌出歯数の33年間の推移と,萌出歯数に関連する因子の解析を目的とした.対象は1980年から2012年まで北海道江別市の1歳6か月児健康診査の受診児,27,454名である.歯科健康診査と身体計測結果に基づき,男女別に,年次ごとの1人平均萌出乳歯数,16歯以上保有者割合,癒合歯保有者割合を算出し,年次との関係を回帰直線で求めた.さらに,出生年,性別,出生順位,出生体重,1歳6か月時の身長,同胸囲,癒合歯数,母親の年齢を説明変数,16歯以上萌出の有無を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った.その結果,1)出生時体重,1歳6 か月時の体重,同身長,同胸囲,1人平均萌出乳歯数,および16歯以上保有者割合は,男女とも経年的に減少した.年次(x)から1人平均萌出歯数(y)を求める回帰直線の傾きは男児-0.0188,女児-0.0181であった.2)1人平均萌出歯数は男児が女児より多い傾向にあった.3)癒合歯保有者割合は年々増加する傾向にあり,男児のほうが女児よりもその傾向が強かった.4) 16歯以上萌出については出生体重,1歳6か月時身長,1歳6か月時体重と有意な関連がみられた.
以上から,ここ33年間では,乳歯の萌出が遅れる傾向にあり,乳歯の萌出には児の出生体重や1歳6か月時身長,1歳6か月時体重が関連している可能性が示唆された.