2021 年 71 巻 3 号 p. 153-159
歯の喪失は,個人の歯科疾患の既往歴とライフコース全体にわたる歯科治療歴を反映する.
本研究では,項目反応理論(IRT)分析とベイジアンネットワーク分析により各歯の喪失に対する感受性と歯の喪失パターンについて検討した.被験者は有料老人ホーム12施設の入居者276名だった.口腔内診査は3名の歯科医師により実施され,歯の残存,喪失とその部位が診査された.統計解析は歯レベルで実施された.被験者のうち,75名(27.2%)が無歯顎者だった.下顎第一大臼歯は最も喪失しており,下顎犬歯は最も残存していた.歯の喪失パターンは上顎下顎を別に分析した.歯の喪失パターンについては,歯の喪失の開始点を上顎は第二大臼歯,下顎は第一大臼歯に設定した.その結果,上顎では最初に第二大臼歯が失われると,2番目に上顎第一大臼歯が失われ,3番目に上顎第一小臼歯が失われる傾向にあった.下顎では,第一大臼歯・第二大臼歯を喪失すると中切歯から第二小臼歯すべての歯の喪失に影響を及ぼす結果であった.
本研究は,ベイジアンネットワーク分析を適用することにより,歯の喪失パターンを検証した.大臼歯は歯の喪失の開始点である可能性がある.したがって,歯の喪失を回避するには,健康な大臼歯を維持することが重要であると考えられた.