口腔衛生学会雑誌
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原著
糖尿病患者における間食習慣および口腔保健行動と口腔環境との関連性
吉岡 昌美川島 友一郎福井 誠柳沢 志津子中江 弘美十川 悠香日野出 大輔
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2021 年 71 巻 4 号 p. 215-222

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抄録

 糖尿病と歯周病は肥満や喫煙などの共通のリスク因子を有しており,糖尿病とう蝕はシュガーコントロールなど共通の食事指導を必要とすることから,糖尿病と歯科疾患の双方に関連する保健行動がコモンリスクファクターアプローチのターゲットとなる可能性がある.本研究では糖尿病患者の食習慣および口腔保健行動と口腔環境との関連性を明らかにし,コモンリスクファクターアプローチの重点課題を抽出することを目的とした.有歯顎の2型糖尿病外来患者68名を対象に食事と口腔保健に関連する質問紙調査,多項目唾液検査および口腔内診査を行い,各項目間の関連性を統計学的に分析した.その結果,「ダラダラ食い」「甘い間食」と唾液の酸性度との間に有意な関連を認めた.「ダラダラ食い」は「歯がしみる」症状とも関連した.「歯磨き時の出血」「寝る前の歯磨き」は唾液の潜血,タンパク質と関連しており,唾液の潜血は「左右の奥歯でかめる」こととも関連していた.唾液の潜血が多いことを目的変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った結果,「外出先での歯磨き」と「寝る前の歯磨き」が有意に関連することが明らかとなった.以上のことから,間食習慣に重点を置く食事指導と好ましい歯磨き習慣を身につけるための保健指導を強化することが糖尿病患者の口腔環境の改善に繋がる可能性が示唆された.

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© 2021 一般社団法人 口腔衛生学会
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