口腔衛生学会雑誌
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原著
加熱式タバコの禁煙意思に,口腔の健康に着目した介入は効果的か?
矢田部 尚子中島 由香島津 篤谷口 奈央内藤 麻利江髙江洲 雄埴岡 隆
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2021 年 71 巻 4 号 p. 223-230

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抄録

 わが国では,加熱式タバコの使用者が急増している.本研究では,加熱式タバコ使用者の禁煙意思に,口腔に着目した介入は効果的かを調べることを目的とした.某職域で2019年度に口腔の健康に着目した1日の禁煙の啓発事業を行った.20〜54歳の男性喫煙者241名(平均年齢:33.2±10.5歳)のデータを分析した.アウトカム指標は事業実施前後における禁煙意思の変化とし,さらに,1 日の喫煙本数,喫煙歴,禁煙意思の有無,口臭や肺年齢,呼吸機能,呼気中CO濃度(血中カルボキシヘモグロビン濃度)と喫煙の種類との関係を調べた.加熱式タバコ使用者(燃焼式との併用を含む)は72名(29.9%)であった.禁煙意思ありの割合は,全体(25.7から44.4%)および40歳未満(28.6から49.7%)では啓発事業後に有意に増加した(p<0.05).40歳以上では加熱式タバコ使用者の禁煙意思ありの割合が有意に増加した(8.7から34.8%,p<0.05)が,燃焼式タバコ単独使用者では有意の変化は認められなかった(p>0.05).加熱式タバコ使用者の呼気中CO濃度(血中カルボキシヘモグロビン濃度)は燃焼式タバコ単独使用者より低かった(p<0.001)が,口臭や肺年齢差,呼吸機能は,加熱式タバコ使用者と燃焼式タバコ単独使用者との間に有意差は認められなかった(p>0.05).以上のことから,口腔の健康に着目した介入は加熱式タバコ使用の禁煙意思の向上に効果的であるとともに,喫煙者全体の禁煙意思の向上にも有効であることが示唆された.

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© 2021 一般社団法人 口腔衛生学会
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