2022 年 72 巻 1 号 p. 18-27
周術期口腔機能管理が保険収載され8年ほど経過し,実施現状の調査を目的とした,各病院対象の質問票調査を用いた報告がなされてきた.本研究では,病院に勤務する歯科衛生士の周術期口腔機能管理に対する意識を調査し,それに関連する要因を検討することを目的とした.記名を任意とした自記式質問票を作成し,2018年1月から2019年9月の期間で,30施設を対象に郵送法にて実施した.調査項目は,勤務先および勤務形態,周術期口腔機能管理の実施体制,歯科衛生士の意識,患者数とした.
自記式質問票に対する回答を得た施設は30施設のうち27施設(回収率:90.0%)であり,歯科衛生士116名の有効回答を得た.周術期口腔機能管理に従事する歯科衛生士の不足を感じる者の割合は,病院種類や独立部署の有無,患者数を問わず,高い結果となった(70.7%).主成分分析により,抽出された3成分のスコアプロットをもとに,歯科衛生士数の不足感を検討したところ,不足感のある者は勤務施設における周術期口腔機能管理業務と他業務との兼任歯科衛生士数が多く,周術期口腔機能管理の活動度が低く,実施上の問題点が少ない傾向にあった.
本研究結果から,周術期口腔機能管理に携わる歯科衛生士は,歯科衛生士数の不足を感じていた.そして,歯科衛生士数の不足感に影響する因子は単独ではなく,歯科における内的要因のみならず,医科や病院,地域歯科医院といった周術期口腔機能管理実施体制および環境等の外的要因を含む多因子であることが示唆された.