2022 年 72 巻 1 号 p. 28-33
本研究は,幼児期の約1年間の継続的なフッ化物洗口が,唾液のpH,緩衝能,無機イオン濃度に与える影響と,う蝕抑制効果について検討することを目的とした.年中児から0.1%NaF溶液(450 ppmF)を週1回にてフッ化物洗口を実施している施設の幼児15名とフッ化物洗口を実施していない施設の幼児18名を対象とし,年中児のときと1年後の年長児になったときにそれぞれ1回ずつ同一被験者から安静時唾液の採取とう蝕罹患状況を調べた.採取した唾液からpH,緩衝能,無機イオン濃度を測定し,フッ化物洗口実施有無による各唾液因子の比較を行った.Ca2+では,フッ化物洗口群のほうが有意な低下が認められた.NH4+ とPO43- では,フッ化物洗口実施群,非実施群ともに,年長児で有意な上昇が認められた.う蝕罹患状況は,フッ化物洗口実施群での年中児から1年後のう蝕増加率は21.74%であったのに対し,フッ化物洗口非実施群は61.11%もの増加が認められた.う蝕経験者数は,フッ化物洗口実施群での年中児から1年後のう蝕増加率は10.00%であったのに対し,フッ化物洗口非実施群は30.00%であった.幼児期における約1年間の継続的なフッ化物洗口は,Ca2+ に影響を与えることやう蝕の増加率を抑制する傾向が示唆された.