口腔衛生学会雑誌
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原著
口腔状態とサルコペニアとの関連についての横断研究
稲田 さくら
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2024 年 74 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

 近年,口腔機能とサルコペニアとの関連の報告が増えている.しかし,これらの先行研究において,口腔機能に加えて現在歯数を含む口腔状態とサルコペニアとの関連については,ほとんど検討されていない.さらに,研究間で一貫性がなく,詳細な関連性は明らかにされていない.本研究の目的は,高齢者における口腔機能を含む詳細な口腔状態とサルコペニアとの関連を検討することである.2022年10月~2023年6月に岡山大学病院歯科外来を受診した60歳以上の患者を対象に,サルコペニア,口腔状態,栄養状態,精神・心理状態,併存疾患を調査した.口腔状態は,舌背細菌数,口腔湿潤度,舌圧,咬合力,オーラルディアドコキネシス(Oral diadochokinesis:ODK),咀嚼機能,嚥下機能,現在歯数を評価した.栄養状態は簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment: MNA)を用い,精神・心理状態は老年期うつ病評価尺度を用いて評価した.χ2 検定およびMann-Whitney U 検定によると,年齢,性別,舌圧,ODK/pa/,/ka/,現在歯数,MNA値がサルコペニアと関連していた.共分散構造分析の結果,舌圧が低いほど栄養状態が悪く,栄養状態が悪いほどサルコペニアであった.年齢は,舌圧,栄養状態およびサルコペニアと関連があった.

 結論として,舌圧は栄養状態と関連し,栄養状態はサルコペニアと関連した.舌圧の低下が栄養状態の悪化につながり,サルコペニアを引き起こす可能性が示された.

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© 2024 一般社団法人 口腔衛生学会
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