口腔衛生学会雑誌
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歯石の免疫化学的研究
歯周疾患の免疫学的研究 (Series No. 3)
上野 真人
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1970 年 20 巻 1 号 p. 50-67

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抄録

歯石は歯周疾患と深い関係をもつている。そこで, 歯石を免疫化学的に研究するために, 歯石, 加熱処理歯石, EDTA-脱灰歯石の三種を抗原として家兎を免疫し, いくつかの異なる抗体を含むと思われる家兎の免疫血清を用いて, 逆に歯石の抗原可能性を解析してゆくアプローチをとつた。得られた免疫血清を用いてin vivoの抗原抗体反応として, PCA反応 (Passive Cutaneous Anaphylaxis) を, またin vitroの抗原抗体反応として免疫拡散法を応用し, 歯石, 歯石抽出物およびその関連物質である歯垢, 唾液, 血清蛋白, さらに実験歯石について, 各々の抗原性を追求した。その結果, 歯石抽出物によるPCA反応が陽性であることから, 歯石には局所アナフィラキシーを惹起せしめるようなアレルギー活性を有する物質が含まれていることを示した。他方, 免疫拡散法において, 未処理歯石に対して少なくとも4本の沈降帯が観察された。このことは, 歯石に沈降反応を起すような比較的強い可溶性抗原が少なくとも4種以上含まれていることを示唆した。歯石に物理化学的な抽出操作を加えた歯石抽出物では, 0.85%NaCl可溶性分画に2本, 不溶性分画を微アルカリである7%NaHCO3に溶解したものに1本の沈降帯を認めた。PCA反応の結果と合せ考え, さきに西村の発表したヒトの皮内反応陽性物質も当然この歯石抽出物質中に存在していると考えられる。また, 家兎の歯石免疫血清と沈降帯をつくる物質が歯垢に2種, 耳下腺唾液10倍濃縮物に1種, 混合唾液10倍濃縮物に3種存在していることが明らかとなつた。さらに, 血清中のγ-グロブリン, アルブミンおよび実験歯石と反応する抗体も歯石免疫血清中に含まれていた。これらの所見は, 歯石の抗原と血清学的に密接な関連を有する物質が歯垢, 唾液, 血清蛋白などに存在していることを示唆している。

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