口腔衛生学会雑誌
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幼児のdefに対する在胎時の気候要素の影響
岩橋 修
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1970 年 20 巻 1 号 p. 8-44

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抄録

齲蝕罹患は歯の生歯後のエナメル質表面の局所作用のみならず, 歯の発生発育期の状態との関係が深い。 乳歯の歯胚形成や石灰化の開始は胎生中つまり母体内で行われるから, 乳歯齲蝕を検討する場合は母体の状態に対しても十分な考慮をはらう必要がある。
母体は生活環境の影響を著しくうけるが, その中でも特に外気候が重要な位置をしめている。 そこで, 東京都内幼児4, 992名を研究対象とし乳歯齲蝕の罹患と, その幼児の在胎時における母体の外界の気候要素, 不快指数との関係を検索した。 その結果, 検査対象を1年の年令群に, またその年令群を出生月別に分類して齲蝕罹患状態をdefで観察すると, 各年令群とも全般的に9, 10月出生児は高い値を5, 6, 7月出生児は低い値を示した。 また, これを歯種別defでみると同じような状態がみられた。
ついで, この各年令群の出生月別defと在胎時の気候要素とは4, 5年令群において出生1ヵ月前の気温, 湿度, 不快指数のいつれかと関係が認められたが, 風速とは関係があまりないようであった。 このようなことは歯種別defにもあらわれた。
歯種別defと在胎時の気温, 湿度との関係を認めた年令群における出生月別defの中で, そのdefの最低値と最高値を示す在胎時の気温 (y), 湿度 (x) を用いてdefの最低帯を求めると, 気温14.5℃, 湿度62%から気温12.6℃, 湿度73%の間においてlogy=0.0001x+0.99, y=0.2651x2-35.958x+1224の式が, また最高帯は気温21.7℃, 湿度75%から気温26.3℃, 湿度80%の問においてlogy=0.0142x+0.29, y=-0.3290x2+51.929x-2022の式が得られた。 これと同様に不快指数についてdef最高値の出現率は62.5から急増し77.5までは全出現率の50%を示した。
以上の成績により乳歯齲蝕罹患は母体の外気候と関係があることを推測し得た。

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