口腔衛生学会雑誌
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柑桔類の多量摂取に起因すると考えられる歯牙侵蝕症の1例
岡田 直治高岡 諄岸田 隆森本 基
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1971 年 21 巻 1 号 p. 12-16

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抄録

本症例は22才の女性に認められた歯牙侵蝕症の1例である。
被検者は生来健康で著患を知らず, 家族歴にも特記すべきことはなく, 高校卒業後, 某銀行に事務員として就職し, 今日に至ることから職業性に本症発生の可能性は認められない。
口腔内の清掃状態は極めて良好で沈着物は全く認められない。歯口清掃については小児期より心がけ, 特に15才頃より刷掃には注意するようになり, 1日2~3回, 回転法により時間をかけて実施している。
また, 被検者は小児期より酸味の食品を嗜好し, 現在でも季節には夏蜜柑を1日10個程度は摂取し, 食事にも酸味の強い食物をとることが多い。
本症例についつは, 2年前の定期健康診断にて指摘されるまでは自覚せず, 今日に至るまで自覚症状は認めていない。
歯牙侵蝕症の状況は写真に示すごとく321123各歯牙とも歯頚部より切端にかけて唇面に平坦な実質欠損を認め, 特に21123は切端部2~3mmを残し, 象牙質が露出している。下顎は上顎に比し軽度であるが歯の菲薄化は進んでいる。23には象牙質が露出している。
レプリカ所見では明らかな象牙質の露出を認め, エナメル質部分もすべて小柱像が認められる。レプリカ像からは全面に脱灰像が認められると同時に, 刷掃によつて生じたと思われる傷も多く認められ, 酸含有食品を嗜好すると共に積極的を刷掃が本症例の進行を早めているものと考えられる。

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