口腔衛生学会雑誌
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洗口用弗素錠剤による齲蝕予防管理の一展開例について
木津喜 聡池田 春吉井田 潔金 孝岩井 直信吉田 浩
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1971 年 21 巻 1 号 p. 17-23

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抄録

小学校において, 弗素による齲蝕予防法を行なうことは設備, 管理, 方法, 時間, 費用などの面で種々の困難を伴なう場合がある。
そこで1錠中に弗化ナトリウム1mgを添加した洗口用錠剤を使用して, 小学校の第2学年から4学年の児童116名に本錠剤を2錠, 連続して1カ年間, 学校での昼食終了時によく咀嚼し, その後, 水で洗口させる齲蝕予防管理の一展開の実施を行なつた。
そして, 同学年の206名の児童を対象として, 実施, 対照の両児童の永久歯齲蝕罹患状態をDF (齲蝕の未処置と処置) をもつて比較した。
その結果, 各学年児童ともDFにおける上下顎の所有者率, 一人平均歯数ならびに臼歯部の一人平均歯面数では実施, 対照の両児童はいずれも1カ年経過後は増大するが, その増大は実施児童の方が少ない。しかし上下顎の歯率では対照児童は増大するが, 実施児童は低下する。
また, 実施児童のDFにおける齲蝕抑制率を求めると, 上下顎の一人平均歯数では, 第2学年は57.67%, 第3学年は55.63%, 第4学年は34.62%であり, したがつて低学年の方が高率である。しかし, 臼歯部の一人平均歯面数では, 第2学年は35.38%, 第3学年は52.83%, 第4学年は53.33%であつた。つまり高学年の方が高率を示した。
以上からみて, 本弗化ナトリウム洗口用錠剤を使用したこの展開の実施は, 洗口に用いるより経費が節約でき, 錠剤を水に溶解する繁雑さが省略され, しかも齲蝕予防効果が得られるから, 児童を対象とした齲蝕予防管理として有効な一展開である。

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