口腔衛生学会雑誌
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レモン汁塗布による歯面変化の実験的観察
高岡 諄岡田 直治津川 恵子森本 基
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1971 年 21 巻 1 号 p. 6-11

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抄録

レモン汁を歯面に塗布しエナメル表面の初期変化がいかにあるかレプリカ法を用い光学顕微鏡によつて観察した。
レモン汁は時間の経過と共にpHの低下をきたすことより, 常に搾汁直後のものを使用することにした。
基礎実験として行なつた抜去歯牙へのレモン汁塗布は5歯とし, 1分間塗布, 1分間水洗, レプリカ採取鏡検, これを20回繰返した。
その結果, 1回塗布では歯牙表面に変化を認めず, 2回塗布で1歯, 3回塗布で2歯, 5回塗布で程度の差はあるが全例に変化を認め, 7回塗布で全例に視野全面にエナメル小柱末端像を認めた。
生体歯牙に対するレモン汁の塗布実験では1日1回1分間の塗布とし, 実験期間は20日間とした。なお, レモン汁の塗布のみを条件とし, 刷掃, 食事等日常生活には何ら規制を加えなかつた。
被検者は1|1の健康な青年男子10名とし, l1に対して10日間連続塗布, レプリカ観察, 1|は視野全面にエナメル小柱末端像を認めるまで連続塗布, あとは実験期間中レプリカ観察のみとした。
両実験とも3~4日間で視野全体にエナメル小柱末端像を認めるようになり, 抜去歯牙より変化は早い。
塗布中止後の変化は各様であり, 翌日よりエナメル小柱末端像の消退を認めるもの, また, 10日間を経ても無変化のものもある。
レプリカ縁からみて歯の表面変化の早く認められる例ほど像は変化せず経過し, 変化しにくい例ほど早くエナメル小柱は消失する傾向を認めた。

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