口腔衛生学会雑誌
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弗化物入り錠剤服用の齲蝕予防効果について
貴志 淳大野 博清水 善幸宮本 房治滝本 洸窪田 正紀岩本 英雄
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1971 年 21 巻 1 号 p. 24-31

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抄録

小学校児童期は齲蝕の発生, 罹患の激しい時期である。したがつてこの期においては強力な齲蝕の予防対策が必要である。
私どもは, 東京都内の1小学校の児童であつて, 入学時より学校給食時に弗素添加錠 (1錠中に主成分として弗化ナトリウム0.5mg, ビタミンA 2,500I.U., ビタミンD2 250I.U. を含む) 1錠を連続服用している6歳から11歳までの児童211名, つまり実施児童, ならびにその小学校と同様の環境にある同年齢児で本錠剤を用いていない464名, つまり対照児童について歯の検査を行ない, 年齢階級別に実施・対照両児童の歯科疾患状態ならびに両者のF-値を求めて比較観察したところ次の結果を得た。
齲蝕において一人平均歯数のdfでは, 実施・対照両児童の間には各年齢とも有意の差が認められなかつた。しかしDFでは, 本錠剤を服用している児童が9歳以上において有意の差で, 服用していない児童より少ない値を示した。
また, 歯牙付着物, 歯周疾患, 不正咬合の罹患, 所有者率では, 実施・対照両児童の間には各年齢とも有意の差はなかつた。
以上よりみて, 本錠剤をこのように服用すると服用後約3年以後に齲蝕予防効果があらわれるから, 小学校における児童を対象とした齲蝕予防手段としてこの方法は有用性のあるものと考えられる。

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