口腔衛生学会雑誌
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合成樹脂齲蝕予防填塞材のガラスフィラー添加に関する研究
大石 孝弘
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1971 年 21 巻 1 号 p. 32-52

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抄録

この研究は, 竹内らによつて開発されたEthyl-2-cyanoacrylate とPoly-methylmethacrylateとを主剤とする齲蝕予防填塞材の有効期間の延長を目的として行なわれた。
未処理ガラスフィラー (ホウケイ酸ガラス粉末), これに各種類のシラン処理剤で表面処理したシラン処理ガラスフィラー, シランA-174処理後さらにMethylmethacrylate (MMA) の溶液重合処理, 懸濁重合処理, 塊状重合処理したガラスフィラーのそれぞれを添加したガラスフィラー添加填塞材を実験試料として用いた。そして, この填塞材におけるガラスフィラー添加による耐摩耗性, かたさ, 圧縮強さ, 耐水性に対する影響を研究した。
結果
1. 未処理ガラスフィラー添加填塞材の耐摩耗性, かたさ, 耐水性は, 添加量の増加とともに向上した。
2. シラン処理ガラスフィラー添加填塞材における, その物性に対するシラン処理剤の種類の影響は, シランA-187は他の4種類のシランに比べ, 最もすぐれ, シランA-187処理ガラスフィラー70wt%添加填塞材は, ガラスフィラー無添加填塞材に比べ, 耐摩耗性は約5倍, 圧縮強さ, かたさ, 耐水性も若干向上した。
3. シランA-187とシランA-174処理ガラスフィラー添加填塞材における, その物性に対するシラン処理濃度の影響は, 0.05~1.0vol%の範囲内では, ほぼ同様であつた。
4. シランA-187とシランA-174処理ガラスフィラー添加填塞材における, その物性に対するシラン処理ガラスフィラー添加量の影響は, 添加量の増加とともに, 諸物性は向上した。
5. シランA-174処理後MMA重合処理ガラスフィラー添加填塞材における, その物性に対するMMAの重合処理方法の影響は, 溶液重合処理方法がすぐれていた。
6. シランA-174処理後MMA溶液重合処理ガラスフィラー70wt%添加填塞材は, ガラスフイラー無添加填塞材に比べ, 耐摩耗性は約6倍, かたさ, 圧縮強さは若干向上し, 吸水量は著しく減少した。これらの値は, ガラスフィラー無添加即時重合レジンに比べ, 耐摩耗性, かたさ, 耐水性の点で著しく向上し, また, 耐摩耗性, 耐水性において, シランA-174処理ガラスフィラー70wt%添加即時重合レジンのそれとほぼ同じ物性値を示しているといえる。

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