口腔衛生学会雑誌
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齲蝕予防填塞法の前処理におけるほうろう質の溶解性と接着性とに関する研究
大澤 武雄
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1971 年 21 巻 1 号 p. 53-69

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抄録

Ethyl-2-cyanoacrylateとPoly-methylmethacrylate粉末とを主剤とする齲蝕予防填塞法の, 有効期間を延長させるためには, 填塞材とほうろう質との接着力の向上が必要とされる。接着力の向上を図るため, ほうろう質をあらかじめリン酸で処理する方法が報告されているが, 健全なほうろう質を処理するのであるから, ほうろう質の損傷ということをじゆうぶん考慮しなければならない。そこで, 各種処理剤をほうろう質に作用させた際の, ほうろう質の溶解性と接着性とに関する基礎的な知見を得る目的で, 本研究を行なつた。研究材料と方法は, 処理剤として15種類の水溶性の酸を選び, それぞれ7種類の濃度の溶液を用い, 著者らの考案したほうろう質錠剤の溶解性試験, およびヒト抜去上顎中切歯研摩唇面を処理した際の接着力試験 (1週間水中浸漬後) を行なうとともに, 研摩ほうろう質処理面の電子顕微鏡観察を行なつた。その結果, 同じ種類の処理剤における, 濃度に対する溶解量ならびに接着力は, 両者とも山型の傾向を示し, 溶解量と接着力との間には, 溶解量が増加すれば接着力も増加し, 溶解量が減少すれぼ接着力も減少するという正の関係が認められた。しかし, 処理剤の種類が異なると, 両者の間には一定の関係がみられず, ほうろう質の溶解量が少なく, 接着力を著るしく向上させ得る処理剤の存在が示唆された。さらに, 処理剤の種類によつて, 処理ほうろう質面の形態に差のあることが認められ, 接着力向上には, 処理ほうろう質面の形態が強く影響することが認められた。

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