口腔衛生学会雑誌
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尿中フッ素の衛生学的評価に関する基礎的研究 (Fluoride study No. 13)
矢崎 武大橋 勝美久保田 昌子奥寺 元宮下 典子飯塚 喜一
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1974 年 24 巻 3 号 p. 191-206

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抄録
尿中に排泄されるフッ素 (F) について, その衛生学的評価のbaseを求めるため, 飲料水中F濃度が0.1ppm以下の低F地域に生活する, 主として20~30歳の男子の尿を用い各種条件下で尿中Fの動きをしらべ, 考察を行なつた。その結果, 尿中F濃度は平常時, 蓄尿時間に影響されない安定した値を示し, 個体内で, また個体間でも0.1~1.1ppmの間にあるものと考えられた。さらにこの範囲内で, 尿中F濃度としての変動幅は, 個体内ではその平均値に対し±60%, 個体間で±113%と計算された。また平常時, 蓄尿時間が一定の尿中F濃度と尿量の間に負の相関がみられた。
Fの摂取により, これらの関係はくずれ, 尿中F排泄量は摂取量に応じた上昇と減衰を示したが, 尿中F濃度は必ずしもそれにしたがう傾向を示さず, 尿中F濃度による評価のむずかしさと危険性が暗示された。F摂取後, その30%が3時間以内に, 50%が24時間以内で排泄された。
これらのことから, 尿中Fの評価は濃度を用い, 上のような範囲を考慮することにより, 大まかには行ないうるが, 尿中F量の経時的変動をとらえることにより, さらに正しい評価がなされるものと考えられた。
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