口腔衛生学会雑誌
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リン定量によるほうろう質生検法を応用した歯質耐酸性の分布ならびに齲蝕罹患との関係
歯質耐酸性測定法シリーズIV
嶋村 昭平
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1974 年 24 巻 3 号 p. 207-227

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抄録
竹内の疫学的齲蝕発病理論式における, 歯牙の種類に共通な齲蝕発病抵抗性因子 (r) を構成する主要な要素である, 歯質耐酸性を測定するために, 測定方法の開発, 改良, 測定前の歯面研摩条件などの研究が竹内ら, 川崎ら, 長島ら (歯質耐酸性測定法シリーズI, II, III) によってなされてきた。本研究は, これらの基礎的な研究結果を野外に応用したものである。
調査地域は, わが国の平均的生活水準にあるとみなされ, 飲料水中のフッ素濃度が支障とならない京都府亀岡市で, 調査時期の国民1人当り年間砂糖消費量は20kg前後であった。調査対象は, 調査学校の昭和40年度小学校第1学年生 (A群), 第4学年生 (B群) の全員を母集団とした。これらのコーホートの口腔診査を3年間継続した。
測定方法は, 上顎中切歯唇面に, 炭酸カルシウム基剤の磨歯剤を付して研摩, 弱酸の予備貼付けを行った後に, 乳酸緩衝液を用いたpH4.0のいわゆるAgar Plate法, pH4.0またはpH2.5のいわゆる不織布法のいずれかをそれぞれ3分間行ない溶出したリン量をモリブデン酸・サフラニン法で定量した。
これらの測定値 (164人~180人) の分布は, 正規に近く, 歯牙集団の歯面における歯質耐酸性の分布が正規であるとすれば, pH2.5の不織布法が, それをとらえるに適した方法の一つであると認められた。
また, この方法による測定値から, 歯質耐酸性の弱群と強+中群の児童との, 上顎第一大臼歯の齲蝕発病の間に僅かながら有意の正の関係が認められた。
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