口腔衛生学会雑誌
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24 巻, 3 号
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  • 飯塚 喜一, 矢崎 武, 大橋 勝美, 久保田 昌子, 奥寺 元, 小池 雄, 蔦 明江
    1974 年24 巻3 号 p. 183-190
    発行日: 1974年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    飲料水低フッ素 (F) 地域に4年以上に亘つて生活する, 6~11歳の学童1678名について, 斑状歯調査ならびに尿中F濃度の測定を行なつた。その結果, 一歯列に存在する最高度の2歯というWHO基準に従うと, おおよそ11.1%がM1程度の斑状歯を有することになる。また一歯列に左右対称, 4歯以上存在するものの最高度の2歯という著者らの基準に従えば, 約4.5%がM1と判定された。とにかくM1以上と考えられる歯を1歯でも有する者は25.6%にも達する。
    朝起床後の尿について, 尿中F濃度の測定その他の検査を行なつたところ, 尿中F濃度は低学年から高学年に向うにしたがい高くなる傾向を認めた。また, 尿中F濃度の最低値は約0.1ppmであり, これは比較的安定していた。したがつて, Fによる汚染の判定には, この最低値の変動 (いわば右方移動) を評価の基準とすることが良いのではないかと考えられた。さらに, 尿蛋白が陽性を示す者とF濃度の高い者の間には有意な正の相関を認め, 興味がもたれた。
  • 矢崎 武, 大橋 勝美, 久保田 昌子, 奥寺 元, 宮下 典子, 飯塚 喜一
    1974 年24 巻3 号 p. 191-206
    発行日: 1974年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    尿中に排泄されるフッ素 (F) について, その衛生学的評価のbaseを求めるため, 飲料水中F濃度が0.1ppm以下の低F地域に生活する, 主として20~30歳の男子の尿を用い各種条件下で尿中Fの動きをしらべ, 考察を行なつた。その結果, 尿中F濃度は平常時, 蓄尿時間に影響されない安定した値を示し, 個体内で, また個体間でも0.1~1.1ppmの間にあるものと考えられた。さらにこの範囲内で, 尿中F濃度としての変動幅は, 個体内ではその平均値に対し±60%, 個体間で±113%と計算された。また平常時, 蓄尿時間が一定の尿中F濃度と尿量の間に負の相関がみられた。
    Fの摂取により, これらの関係はくずれ, 尿中F排泄量は摂取量に応じた上昇と減衰を示したが, 尿中F濃度は必ずしもそれにしたがう傾向を示さず, 尿中F濃度による評価のむずかしさと危険性が暗示された。F摂取後, その30%が3時間以内に, 50%が24時間以内で排泄された。
    これらのことから, 尿中Fの評価は濃度を用い, 上のような範囲を考慮することにより, 大まかには行ないうるが, 尿中F量の経時的変動をとらえることにより, さらに正しい評価がなされるものと考えられた。
  • 歯質耐酸性測定法シリーズIV
    嶋村 昭平
    1974 年24 巻3 号 p. 207-227
    発行日: 1974年
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    竹内の疫学的齲蝕発病理論式における, 歯牙の種類に共通な齲蝕発病抵抗性因子 (r) を構成する主要な要素である, 歯質耐酸性を測定するために, 測定方法の開発, 改良, 測定前の歯面研摩条件などの研究が竹内ら, 川崎ら, 長島ら (歯質耐酸性測定法シリーズI, II, III) によってなされてきた。本研究は, これらの基礎的な研究結果を野外に応用したものである。
    調査地域は, わが国の平均的生活水準にあるとみなされ, 飲料水中のフッ素濃度が支障とならない京都府亀岡市で, 調査時期の国民1人当り年間砂糖消費量は20kg前後であった。調査対象は, 調査学校の昭和40年度小学校第1学年生 (A群), 第4学年生 (B群) の全員を母集団とした。これらのコーホートの口腔診査を3年間継続した。
    測定方法は, 上顎中切歯唇面に, 炭酸カルシウム基剤の磨歯剤を付して研摩, 弱酸の予備貼付けを行った後に, 乳酸緩衝液を用いたpH4.0のいわゆるAgar Plate法, pH4.0またはpH2.5のいわゆる不織布法のいずれかをそれぞれ3分間行ない溶出したリン量をモリブデン酸・サフラニン法で定量した。
    これらの測定値 (164人~180人) の分布は, 正規に近く, 歯牙集団の歯面における歯質耐酸性の分布が正規であるとすれば, pH2.5の不織布法が, それをとらえるに適した方法の一つであると認められた。
    また, この方法による測定値から, 歯質耐酸性の弱群と強+中群の児童との, 上顎第一大臼歯の齲蝕発病の間に僅かながら有意の正の関係が認められた。
  • 嶋村 昭平
    1974 年24 巻3 号 p. 228-234
    発行日: 1974年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    竹内とそのグループは, 歯牙の種類別に歯牙年齢により齲蝕発病のコーホート調査を, 国民1人当り年間砂糖消費量 (p) と対応させて研究してきた。これらの研究のうち, 永久歯については, pが0~15kgのわが国の資料は多数報告されているが, pがそれ以上の時期のものは報告されていない。本論文は, pが20kg近い時期での, 永久歯でのこのような数値を求めたものである。
    本論文は, 著者の「リン定量によるほうろう質生検法を応用した歯質耐酸性の分布ならびに齲蝕罹患との関係」の続編として, 同一資料によったものであり, 異なる点は, 前者では, 歯質耐酸性の弱群と強+中群とに分けて齲蝕指数を求めたものであるが, 本篇では, これらを合して求めたものである。
    このような資料, 方法により, pが20kg近い時期の影響をうけた上顎中・側切歯, 上下顎第一大臼歯の歯牙および歯面を単位としたコーホート観察による齲蝕指数をTable 1, Fig. 1の如くえた。これはpが12~15kgの時期の清水のものより, より大きいpの影響をうけた数値を示していた。
  • 宮野 稔, 川越 武久, 大沢 三武郎
    1974 年24 巻3 号 p. 235-239
    発行日: 1974年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    窩溝齲蝕に対する齲蝕予防填塞法は, 健常な臼歯を萠出後できるだけ早い時期から行なうことが必要とされているが, 近年, 萠出途上で, すでに, 齲蝕が初発する第一大臼歯が少なくないと思われるので, 昭和46年6月, 都市環境下にある小学校第1学年児童379名と, 年長組の幼稚園児255名, 昭和47年6月, 都市環境下にある小学校第1学年児童352名並びに過疎化的傾向にある小学校第1学年児童83名, 計1,069名を対象に, 填塞可能な萠出状態に至るまでの期間における第一大臼歯の齲蝕罹患状態および萠出後間もない第一大臼歯の齲蝕罹患状態を知ろうとした。
    萠出途上の第一大臼歯の齲蝕罹患率は, Table 3のようである。なお, 萠出後問もない既萠出歯の咬合面のDF歯率はTable 4のようで既に填塞を行なえないものが相当数あった。
  • 有田 正俊, 山田 茂, 江間 誠二, 小山 哲, 島田 正, 岡田 圭二
    1974 年24 巻3 号 p. 240-250
    発行日: 1974年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    CHDG (chlorhexidine digluconate) 応用による副作用の有無Str. mutansの耐性変異を生ずる可能性の有無を検討し, かつ副作用の少ない応用方法の開発を目的として本研究を行なつた。
    ラットを対象としてCHDGの0.2%, 2.0%水溶液を35日間塗布した成績では, 歯面, 歯肉, 口腔粘膜に異常を認めなかつた。マウスを対象として12mg/kg, 120mg/gk, 180mg/kg, 240mg/kg, 300mg/kgの5種を経口投与した成績では, 12mg/kg投与群は発育良好で異常を認めなかつた。Str. mutans 5菌株を対象として稀釈法によつてCHDGによる耐性獲得の可能性を研究した結果, その可能性は困難であろうと考えられた。小学校3学年生を対象として1週間1回宛1年間CHDGの2.0%塗布または0.2%含漱を行ない, 併せて刷掃励行を指導したところ, 歯面, 歯肉, 口腔粘膜, 舌などに異常を認めなかつた。1週1回の応用によつて歯垢生成抑制効果を認めたが, 成績は後日報告する。
  • 井上 昌一, 大杉 利幸, 国房 栄子, 柴田 治雄, 寿 武一郎, 森岡 俊夫
    1974 年24 巻3 号 p. 251-261
    発行日: 1974年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    主として微生物より構成されている歯苔は齲蝕ならびに歯周疾患の発症, 増悪と密接に関係している。 これら両疾患の予防には歯苔形成の抑制ないしは阻止が不可欠である。
    本研究は, 多くの歯苔細菌に対して広く溶菌作用を示すStreptomyces globisporus 1829株由来の溶菌酵素を健康な男子11名の口腔に適用し, その歯苔形成に及ぼす影響について検討したものである。 本溶菌酵素をトローチ (7,550単位/錠) として上顎臼歯部の歯肉頬移行部に挿入して自然溶解させ, また洗口液 (6,000単位/回) として1分間口腔内で激しく液の移動により洗口させて, 1日3回毎食後2.5日間適用したのち, 765|567の頬側平滑面および の唇面に形成された歯苔量をそれぞれ前者は歯苔重量を測定して, 後者は写真によって判定したト。 ローチ挿入法の場合は口腔内において十分な強さの酵素活性が長時間維持され, 1日当り23,000から46,000単位の酵素を投与すると, 統計学的に有意の差をもって本酵素の作用により歯苔形成が抑制された。 一方洗口液として用いた場合の酵素の口腔内停滞性は極めて一時的であったが, 1日に18,000単位の酵素を使用すると歯苔形成が抑制される傾向が認められた。 また洗口という方法のみによっても歯苔形成量にかなり著明な減少が認められた。 歯苔中の連鎖球菌数ならびに総ヘキソサミン量, 総還元基量, 蛋白質量およびカルシウム量を測定したところ, 酵素の投与によつて著明に形成の抑制された歯苔と酵素を作用させなかつた歯苔との問には明瞭な差異は認められなかった。 以上の成績から, 本酵素が歯苔コントロールの安全かつ有効な新しい手段となり得ることが示唆された。
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