口腔衛生学会雑誌
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エナメル質表層におけるフッ素濃度分布 (I)
歯面別および層別分析について
飯島 洋一高江洲 義矩
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1976 年 26 巻 2 号 p. 45-49

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抄録

本実験はエナメル質表層における, フッ素の分布状態を歯面別, 層別に解析することを目的として行われた。
健全大臼歯を各歯面別に分割し, 得られた40試料に対し, 0.5M過塩素酸溶液1.0ml中に5sec間ないし, 20sec間etchingを行った。Fの分析は電極法, Caは原子吸光光度計により測定した。その結果, 5sec etchingにおけるF含有量と深さのMean±S.D. は2086±525ppm, 1.78±0.35μmであり, 一方, 20sec etchingにおいては, 2252±1173ppm, 5.16±1.02μmであった。F含有量についての変動係数は5sec etchingに対して20sec etchingの方が約2倍高い値を示した。
このことは, 5μm前後におけるF分布の多様性を示唆していると考えられる。
歯面別においては, 5sec, 20sec etchingともF含有量に有意の差は認められなかったが, 頬舌面に対し, 近遠心面においてF含有量が低い傾向が示された。
エナメル質表層におけるフッ素の密度分布は, 齲蝕に対する抵抗性を確かめる手がかりとなるので, エナメル質における齲蝕の初発に対し, 局在的なF含有量の追求は微量定量を駆使することにより, 化学的組成上の知見が, 今後, 一層, 明らかにされるものと思う。

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