口腔衛生学会雑誌
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乳酸菌飲料水が歯牙におよぼす影響についての組織学的研究
II: Microradiogramおよび走査電子顕微鏡による観察
小高 鉄男井村 哲子小林 美由紀中川 武幸東 昇平
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1979 年 29 巻 2 号 p. 90-102

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抄録

固定したヒトの下顎切歯を, 殺菌および生菌乳酸菌飲料水に浸漬し, エナメル質の表面および内部構造の変化を形態学的に観察した。
両乳酸菌飲料水に浸漬したエナメル質の自然表面は肉眼的に白濁を呈し, 時日の経過とともに白濁の度合は増加してみられたが, しかし, 走査電顕による観察およびX線分析では肉眼的観察に比べ, その差は明瞭ではなく, 殺菌乳酸菌飲料水では10日間浸漬のもの, 生菌乳酸菌飲料水では24時間浸漬のものにエナメル小柱周辺部に微小亀裂, あるいはその溶解像が認められるにすぎなかった。
それに反し, エナメル質の表面下の変化は, 時日の経過とともに脱灰層が内部へ移動し, 表層下脱灰が顕著になる。そして, 最表層には再石灰化を示唆する高石灰化層が観察された。生菌乳酸菌飲料水に10日間浸漬した歯牙エナメル質では, 表層部の高石灰化層は幅広く存在し, その深部に脱灰層が認められた。
走査電顕像における脱灰層のエナメル小柱はすう疎な結晶配列と針状の結晶形態を示し, Retzius線条部ではエナメル小柱の芯の溶出が観察された。
エナメル質および象牙質の断面を乳酸菌飲料水に浸漬した場合では, エナメル質の自然表面と異なり, 脱灰作用は浸漬面から生じ, 表層に石灰化度の高い層を認めることはできなかった。
また, 以上の所見などから前回報告したエナメル質の自然表面および断面の硬度低下についても考察を行なった。

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