口腔衛生学会雑誌
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29 巻, 2 号
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  • II: Microradiogramおよび走査電子顕微鏡による観察
    小高 鉄男, 井村 哲子, 小林 美由紀, 中川 武幸, 東 昇平
    1979 年 29 巻 2 号 p. 90-102
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    固定したヒトの下顎切歯を, 殺菌および生菌乳酸菌飲料水に浸漬し, エナメル質の表面および内部構造の変化を形態学的に観察した。
    両乳酸菌飲料水に浸漬したエナメル質の自然表面は肉眼的に白濁を呈し, 時日の経過とともに白濁の度合は増加してみられたが, しかし, 走査電顕による観察およびX線分析では肉眼的観察に比べ, その差は明瞭ではなく, 殺菌乳酸菌飲料水では10日間浸漬のもの, 生菌乳酸菌飲料水では24時間浸漬のものにエナメル小柱周辺部に微小亀裂, あるいはその溶解像が認められるにすぎなかった。
    それに反し, エナメル質の表面下の変化は, 時日の経過とともに脱灰層が内部へ移動し, 表層下脱灰が顕著になる。そして, 最表層には再石灰化を示唆する高石灰化層が観察された。生菌乳酸菌飲料水に10日間浸漬した歯牙エナメル質では, 表層部の高石灰化層は幅広く存在し, その深部に脱灰層が認められた。
    走査電顕像における脱灰層のエナメル小柱はすう疎な結晶配列と針状の結晶形態を示し, Retzius線条部ではエナメル小柱の芯の溶出が観察された。
    エナメル質および象牙質の断面を乳酸菌飲料水に浸漬した場合では, エナメル質の自然表面と異なり, 脱灰作用は浸漬面から生じ, 表層に石灰化度の高い層を認めることはできなかった。
    また, 以上の所見などから前回報告したエナメル質の自然表面および断面の硬度低下についても考察を行なった。
  • 第3報ヒトにおける実験的研究
    小原 正紀, 和田 誠, 村上 道雄, 加文字 幸雄, 多島 仁, 山田 茂
    1979 年 29 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    日本大学歯学部学生12名を対象とし上下顎前歯を十分清掃した後, 48時間不刷掃状態におき, その間6回歯垢の生成とその拡大状態を調査した。清掃後初めて歯垢を認めた時間は個人差が多く, 4時間後21~33%の歯に歯垢を認めたが, 48時間後に歯垢を認めたものは4~10%あった。清掃後初めて歯垢を認めた時間の歯牙別, 唇舌別の平均値は上顎側切歯の唇側が最も早く13~16時間, ついで下顎側切歯の舌側が15~17時間であった。上顎中切歯の舌側は24時間で最も遅かった。上下顎別にみると, 唇側では差が少なかったが, 舌側では下顎が早い傾向が認められた。歯垢の拡大状態は刷掃不良の場合といくぶん違い, 歯垢の拡大延長した先端が丸みを帯びたものが多かった。
  • 片山 公平, 高橋 義一
    1979 年 29 巻 2 号 p. 112-122
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    齲蝕罹患傾向の性差を厳密に把握するためには, 主として萌出後の国民1人当り年間砂糖消費量 (pと称す) が一定値に安定している時期の歯種別のコーホート資料を萌出後歯牙年齢で観察しなければならない。
    筆者らは, 静岡市内の小学校, 中学校の児童について昭和45年度から3~6年間, 1人の診査医によりWHOの齲蝕の基準によって診査し, p≒27kgに安定時の永久歯の歯種別の男983人, 女778人のコーホート資料について, ヒト年齢および萌出後歯牙年齢により当初萌出100歯当り累積齲歯数 (ΣCx) について性差を比較した。
    その結果, 萌出後歯牙年齢によるΣCxは, 罹患傾向の高い歯種において, 萌出後歯牙年齢の早い時期に女は男より有意に高かった。このことは, 齲蝕罹患傾向は女は男より高いが, その程度は僅かであることを意味していると考えられた。
  • 熱海 智子
    1979 年 29 巻 2 号 p. 123-133
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    亜硝酸イオン (以下NO2-で示す) が, 発ガン性ニトロソ化合物の前駆体の一つであるということはよく知られた事実である。ヒト唾液中にNO2-が存在することについては, 多くの人により報告されてはいるが, その生成機構については, まだ不明のところが多い。この研究の目的は, 唾液中の2-がどのようにして産生されたかを検討することである。
    種々の条件下において, 混合唾液, 耳下腺唾液, 含嗽水, 血液および尿中の2-および硝酸イオン (以下NO3-で示す) 濃度を測定し, 次の結果を得た。
    1) 硝酸ナトリウムを経口投与すると, 混合唾液中に, 多量のNO2-を検出したが, 耳下腺唾液, 血液および尿中には, NO2-は全く認められなかった。一方, 混合唾液, 耳下腺唾液および尿中のNO3-は増加したが, 血液中のNO3-は投与の前後とも一定の値を保った。
    2) 口腔内に硝酸塩溶液を保つと, 数分間で含嗽水中にNO3-の減少とNO2-の増加がみられた。
    3) in vitroでは, 唾液沈渣浮遊液の量に比例してNO2-が産生された。沈渣浮遊液の熱処理およびメンブランフィルター濾液には硝酸還元作用はなかった。10KC, 10分間超音波処理をするとその活性は20%に減少した。
    4) 含嗽水中のVeillonella (口腔内常在性細菌) の数は, NO2-/NONO3-の比と相関した。
    これらの結果から, 混合唾液中の2-は, 食物中のNO2-が直接血液を介して唾液中に分泌されるのではなく, 唾液腺で濃縮されたNONO3-が, 口腔内細菌, 主としてVeillonellaにより, 口腔内で還元されて生成されるものと決論した。
  • 新海 研志
    1979 年 29 巻 2 号 p. 134-144
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    Fluoride Varnishの象牙質におよぼす影響について検索する目的で, 新鮮抜去大臼歯を材料とし, in vitroでFluoride VarnishおよびControl Varnish塗布実験を行い, 化学分析ならびにX線マイクロアナライザ分析によりフッ素取込み量の測定と酸溶解性試験を行った。
    Varnishは5% NaF Varnishと2% NaF Varnishを用い, Control Varnishは成分からNaFを除いたものを用いた。塗布実験は1回塗布の1, 3, 5, 7日間作用と週2回塗布にて1, 2週間作用とした。
    象牙質に取込まれたフッ素量については, window methodにより表層から内層までのフッ素量をイオン電極法を用いて測定した。また, X線マイクロアナライザによる線分析と面分析を行い, フッ素の分布状態を調べた。酸溶解性試験はwindow methodにより0.4M酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 (pH4.0) で連続脱灰し, 溶出するカルシウム量を比色定量することにより行った。
    その結果Fluoride Varnish塗布により象牙質のフッ素量が増加した。フッ素は象牙質表層において高い濃度を示し, 内層70~100μmまで浸透することが認められた。Fluoride Varnishの作用回数が多く, 作用期間の長い程フッ素取込み量は増加した。酸溶解性試験ではFluoride Varnish作用群の方が明らかに酸抵抗性を示し, フッ素取込み量の多い程酸溶解性は低くControl Varnish作用群に比較して2~6倍の酸抵抗性獲得が認められた。
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