抄録
当教室において試験管内継代保存してきたS. mutans標準株のうち, a~g血清型の代表株の齲蝕原性を再試験した。各菌株をゴールデン・ハムスターの口腔に接種し, 高スクロース飼料で42日間飼育した。
調べた20株の保存株のうち6株は, 数回の試験のたびに常に大臼歯の歯面に容易に定着し, 明瞭なプラークを形成し, 有意のレベルで齲蝕を生じさせた。一方, 他の8株は, 歯面への確実な定着に長い期間を必要とし, 定着した菌の数も少く, また, 時に齲蝕を有意に発生させたが, その齲蝕スコアは一般にそれ程高くはなかった。残りの6株は, 試験を反復しても, 一度も有意の齲蝕原性を確認できなかった。各菌株の増殖性, 酸産生能およびスクロース依存性ワイヤープラーク形成能は, これら異った齲蝕原性を示す3群の間に差は見られなっかた。