口腔衛生学会雑誌
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実験的ヒト歯苔の形態的検索-70%のカップリングシュガーCを用いた場合-
西原 圓一朗
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1983 年 32 巻 5 号 p. 458-463

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抄録

筆者はKoulouridesらの装置4) を改良考案したヒトロ腔内装置を用い, 3%砂糖および3%C-S.Cによる歯垢深部の形態を検索した。その結果, 1) 両甘味剤間で形態的に差異を認める。2) 被検者が変っても1) の差異は同傾向を示す。3) 装置よりメッシュを取除いた方がより直接的な口腔環境の結果をつかみ得る。事等を報告2, 3) している。しかし, 市販のキャンデーやヌガーには70%前後の糖含有量のものがある1)。そこでこの報告は, 70%の糖濃度を用いて, 前報8) と同様の実験を行い6日後の歯苔深部の形態を検索したものである。その結果, 使用した70%砂糖例と70%C-S.C例について次の知見を得た。1) 両例共, 菌体間に多層の無定形の帯を認めるが, 対照として用いた生食水例には認められない。また, この帯は, 辺縁の単位膜様構造と内部の線維様構造のみは上皮器官に類似しているが, 他の多くの上皮としての器官が認められないので, この帯を上皮と同じものとは云えない。したがって, この帯は, 糖作用の影響による出現物と思われる。2) 両例の歯苔に顕著な差異はなく, また両例共, 歯質側の表層下脱灰像は認められなかった。したがって今回の実験範囲においては, 両糖液の歯苔および歯質への影響は, 形態上, 両例共, 顕著な差のないものと思われる。

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