口腔衛生学会雑誌
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個人の齲蝕発病性評価に基づく齲蝕予防プログラム
松久保 隆真木 吉信佐塚 仁一郎波多江 道子高江洲 義矩竹内 光春
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1983 年 32 巻 5 号 p. 511-523

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抄録

本論文の目的は, 個人の齲蝕発病性にかかわる諸因子を, 歯面を単位として, 宿主および環境側からとらえ, それらのバランスによって適切な齲蝕予防方法の組み合わせを実施する, chairsideにおける新しい齲蝕予防プログラムを提示することである。
本プログラムは, (1) 歯面の齲蝕感受性および歯垢の齲蝕誘発性の判定, (2) 齲蝕予防方針の決定, (3) 対象歯面への齲蝕予防方法の実施, (4) 齲蝕予防方針の再評価からなっている。
すなわち, 歯面の齲蝕感受性の判定は, 1) 歯面の齲蝕罹患傾向および2) 萌出後歯牙年齢の2つの疫学的パラメーター, 3) フッ化物塗布回数によって行った (Table1, 2, 3)。歯垢の齲蝕誘発能の判定は, 1) 混合唾液中S. mutansレベル, 2) 二色性歯垢顕示剤によって青染される歯垢の付着状態によって行った (Fig. 1)。
本プログラムに採用した齲蝕予防方法は, Table4に示す7種であり, 上述の各評価方法の判定に従って, Fig. 1に示されているように6種のPlanning Caseに分けられる。次に, Fig. 2に示した順序に従って各齲蝕予防方法が対象歯面に実施される。
このプログラムを用いて, 2年4カ月経過した症例と, 6カ月経過した症例とについて, 初診時の各所見, 齲蝕予防方針, その後の経過および予防方針の再評価について報告した。
本プログラムは, 齲蝕発病性の評価に従って, 各患者に適切な齲蝕予防方法が行なわれるので, 患者側への負担は, 従来の保健指導を中心とする予防プログラムにくらべて大きく軽減され, しかもほとんどの患者に顕著な齲蝕予防効果が期待される。

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