口腔衛生学会雑誌
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ラットの早期出銀歯牙の齲蝕感受性に関する研究
武井 啓一
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1983 年 32 巻 5 号 p. 524-540

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抄録

ラットの上顎左側臼歯部粘膜を切開して, 萌出前の臼歯を早期に出齦させ, 齲蝕の発生について正常に萌出した右側の臼歯と比較検討した。
その結果, 以下のような知見が得られた。
1) 離乳前に早期 (生後13, 15, 17日目) に出齦させた臼歯では, 対照側の臼歯より1匹平均齲蝕発生裂溝数が多かった。また, 出齦させた時期が早い程, 1匹平均齲窩数が多かった。
2) 齲蝕誘発性食餌 (Diet#2000) を与えはじめてから5日間隔で動物を殺し, 齲蝕発生状態を検討した結果, 実験側の臼歯では, 対照側に比べて早い時期に重症な齲窩が発生した。また, 1匹平均齲蝕発生裂溝数も早期から実験側に多かった。
3) 早期に出銀させた臼歯には, 市販の粉末普通飼料による30日間の飼育で, 齲窩及び齲蝕裂溝が多数認められた。齲蝕誘発性食餌を与えた群の動物では, 市販の粉末飼料より多くの齲窩, 齲蝕裂溝が認められた。
4) 種々の実験食餌を与えると, 早期に出齦させた臼歯は, 対照側に比して歯垢の付着量が多い傾向が認められた。これらの歯垢の細菌学的な検討もあわせて行なったが, 期待したほどの結果は得られなかった。この点は更に検討を要ずるものと考えられた。
5) 組織学的に検討した結果, 正常なpre-eruptive maturationの進行過程は一定であったが, 早期に出眼させた臼歯では, Toluidin blueによるエナメル質の染色部位は様々で, maturationの過程に混乱が生じていると考えられた。
以上の結果から, pre-eruptive maturationと齲蝕感受性との間に, 密接な関係のあることが示唆された。

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